米国TSCA

米国TSCAとは

米国TSCAToxic Substances Control Act:有害物質規制法)は、有害な化学物質の製造や輸入を規制する法律です。EUのREACHや日本の化審法に相当します。所管当局はEPA(Environmental Protection Agency:米国環境保護庁)です。

TSCAは、USC(United States Code:合衆国法律集)Title15(COMMERCE AND TRADE)CHAPTER 53(TOXIC SUBSTANCES CONTROL)及び、下位法であるCFR(Code of Federal Regulations:連邦行政命令集)Title 40(Protection of Environment)Chapter I(Environmental Protection Agency)Subchapter R(Toxic Substances Control Act)に関連する法令があります。

USC Title 15 - CHAPTER 53
CFR Title 40 - Chapter I - Subchapter R

規制の対象は、米国内で製造・輸入される化学物質、混合物、又はこれらを含有する成形品です。

成形品の対応

◆第5条 SNUR(Significant New Use Rule:重要新規利用規則)

EPAによるリスク評価の結果、環境やヒトの健康に害を及ぼす不当なリスクを提示する可能性があり、相当量環境に入ることや相当量ヒトがばく露する恐れがある、と判断された化学物質の製造・輸入・使用等を禁止又は制限する規定です。詳細は、下位法である40 CFR Part 721に示されています。

15 USC 2604 (e)(1)(A)項
40 CFR Part 721

Subpart Eには2,000を超える化学物質(群)が収載されていて、こういう方法で利用してはいけません、という内容が化学物質ごとに定められています。

40 CFR Part 721 Subpart E

👉 ポイント

自社製品に含有する化学物質情報を洗い出し、成形品への含有量を規制しているSNURが存在するか含有成分ごとに調査する必要があります。該当する場合には、規制値の遵守が求められます。

◆第6条 PBT物質の含有規制

PBT(Persistent, Bioaccumulative and Toxic;難分解性、高蓄積性、毒性)特性を有する物質については成形品への含有規制が設けられています。

15 USC 2605 (h)項
40 CFR Part 751 Subpart E

現在は、以下の5物質が対象です。

DecaBDEデカブロモジフェニルエーテル§751.405
PIP (3:1)リン酸トリス(イソプロピルフェニル)§751.407
2,4,6-TTBP2,4,6-トリ-tert-ブチルフェノール§751.409
PCTPペンタクロロチオフェノール§751.411
HCBDヘキサクロロブタジエン§751.413

2022年3月8日、成形品中のPIP (3:1) の遵守期限日を2024年10月31日まで再延長する最終規則が公布、発効されました。この最終規則は、2021年10月28日にパブリックコメントのために発行された規則案に続くものです。

成形品中のPIP (3:1)の遵守期限を2024年10月31日まで延長する最終規則

👉 ポイント

DecaBDE、2,4,6-TTBP、HCBDは、POPs条約や日本の化審法で規制され、その製造と使用が禁止されています。また、PIP (3:1)は、前述のように2024年10月31日まで適用が延期されるため、現状では、PCTPについてのみ重点的に管理すれば、第6条は満足できていると言えるでしょう。

◆第15条 罰則

民事・刑事罰ともに規定されます。
 民事罰:37,500ドルを超えない罰金
 刑事罰:1日あたり最大50,000ドルの罰金と懲役1年以下
人を死亡させた場合や重度の障害が残ったような場合は、更に厳しい罰金と実刑が科せられます。

摘発事例
TSCAの刑事罰は、下記から検索できます。

Summary of Criminal Prosecutions
(Case Attributes → Statute: → TSCA - Toxic Substances Control Act で検索)

2023年1月時点で69件がTSCA刑事罰を受けていて、多くはアスベストや鉛塗料などの建築関係です。

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